Tinmelモスク、ネクタロムとは関係ないモロッコの歴史ばなし…

モロッコの山間部には、ダム湖がいくつかあります、モスク途中のouirganeにて

モロッコの山間部には、ダム湖がいくつかあります、モスク途中のouirganeにて

私は前モロッコ国王「ハッサン二世」がご健在のころ、モロッコの大学で1年間学んでいたのですが、その山奥にある大学で、アラビア語のイロハ、イスラムの歴史に関する書、南スペインに繁栄したアル・アンダルース関連の本を半ば強制的に読まされました。

正直、当時、それらの本の内容はぜんぜん面白くなく(全然知らないアラブ人の名前がいっぱい出てきて全く頭に入らない…日本に来たばかりの留学生に聖徳太子、織田信長とかを覚えろという感じ)、「宿題だから、テストがあるから」と辞書を頼りに読解し(英語)、学校を卒業し、役目を果たした分厚い本たちは、すっかり実家へお蔵入り…。

今夏、日本の実家に帰省したとき、なにげなく自分の部屋の本棚を眺めていたら、アル・アンダルースについての本を見つけ、なんでこんな面白い本ここに置いて行ってしまったんだろう!と本が可哀そうになり、一緒にモロッコに持って帰ってきました…。

Tinmelに行く道中で乾燥地帯の中を女性が行く…。

Tinmelに行く道中で乾燥地帯の中を女性が行く…。

つらかった若かりし頃を過ぎ、実際に、南スペインや、モロッコにちらばる史跡を見て歩いてきたせいでしょうか、今では、学生時代とは打って変わりモロッコや南スペインの歴史にロマンをバンバン感じています。本や写真集を買ったり、youtubeでアルアンダルス関連のドキュメンタリーを食い入るように見たり…すごい変貌ぶり。

そんななか、マラケシュ市内だけでなく、今住んでいるマラケシュ・アル・ハウズ県にも歴史的にかなり面白い史跡が点在していることが分かり、行ってきました、モスクTinmel(ティンメル)。カサブランカにあるハッサン二世モスクが唯一非イスラム教徒も入場が許される場所かと思っていたら、(現在は実際にお祈りに利用されることはないにしても)このティンメルモスクも、非イスラム教徒が入れる場所なのです。

Tinmelモスクwithサボテン畑

Tinmelモスクwithサボテン畑

ティンメルモスク、マラケシュから100㎞ちょっと、タルーダント方面に抜けるTizi-n-Tist峠道を走り続け、数キロ置きに石と土でできた集落が次々と現れ、ベルベルの人々の昔ながらの生活を感じていると、高台に不意に姿を現します。

Tinmel(ティンメル)村は、木がほとんどない山々に囲まれているのですが、川が流れているので様々な果物(イチジク、リンゴ、ザクロなど)が実っていました。水があるとこんなにも豊かに暮らせるのか、と思わせるほど、村には緑が豊富で、質素ながらもなんだか村自体は豊そうです。

Tinmel村、この川が緑を村に緑をもくれる

Tinmel村、この川が緑を村に緑をくれる

私が行ったときは、ちょうどアーモンドの収穫が村を挙げて始まったばかり。そこらじゅうで、アーモンドの実を木の棒でバンバン叩いて落とす音が聞こえます…。きっと、何百年前から同じようにアーモンドを収獲してきたのでしょう…女性も子供も、お年寄りもまさに村人総出です。

アーモンドが豊作(Tinmelにて)

アーモンドが豊作(Tinmelにて)

モスクに着くと、すべてのドアが閉まっていましたが、ここはモロッコ。ドアに携帯番号がかいてあり、その番号に電話すると、電話の持ち主のおじさんは今からシャワーを浴びるそうで、代わりに8才くらいの息子さんがカギを持ってきてくれました。

中に入ると、外のちょっと粗野な雰囲気とは別世界。コルドバの大モスクか?と思ってしまうほど、壮大。柱が幾重も並んでいて、当たり前ですが、メッカの方向を指し示すミハラブの彫刻は、マラケシュにあるマドラサと同じ精巧さ。こんな小さな村にこんな大きな、立派なモスクがあるとは!との意外性がやはり歴史の面白さ。

Tinmelモスク内部はこんな感じ

Tinmelモスク内部はこんな感じ

マラケシュのメディナを城壁で囲み、いまのような都市にしたのが砂漠の民が起源のアルモラヴィッド朝。そのアルモラヴィッドに反発し、原イスラムの教えに帰るよう説き、打倒アルモラヴィッド朝を目指し、ここティンメルに拠点を置いたのが、アトラス山麓出身のムハンマド・イブン・トゥーマルト(Muhammad Ibn Tumart)。このトゥーマルトが支援者を集め、ティンメル村からマラケシュ襲撃を開始します。ついに1147年、トゥーマルトの教えを引引き継いだ者が、マラケシュを奪取。モロッコが”東はリビア”、”北はスペインのバレンシア”という広範囲を治め、かつてないほど繁栄したムワッヒド朝が始まります。そして彼の死後、記念碑として建てられたのがこのモスク。

トゥーマルトが眠っているそうです。

アトラス山麓の小さな村を拠点に、スペイン、リビア、アフリカモーリタニアを治める大王朝が生まれた…なんだか不思議な気がしますが、このティンメルモスクの壮大さが動かぬ証拠なのでしょう。

マラケシュから約100kmですが、峠道、ヘアピンカーブが続くので、けっこう時間がかかるでしょう。途中ouirganeのダム湖が、真っ青な青色をしていたのが印象的です。カギはすぐ持ってきてくれるとは限りません、時間に余裕をもってご訪問を。

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