Boucharouite Museum、マラケシュに来たら必見のオーナーのパッションに溢れる場所

ボシャラウィット(ラグ)美術館

ボシャラウィット美術館のオーナー

意外かもしれませんが、マラケシュには数々のプライベートの美術館(博物館?)があります(その多くは外国人所有のものです…)。

香水博物館(the museum of perfume)、マラケシュ写真館(La Maison de la Photographie)、Marrakech Museum, Yves Saint Laurentで有名なマジョレル庭園内部にあるモロッコの原住民ベルベル人のアクセサリーや衣装が見れるベルベル美術館(Berber Museum)、その他にもいろいろと小さなものが、マラケシュの旧市街を中心に点在しています。

単なる言い訳ですが、こちらで生活すると、行きたいなあと思っても、なかなか美術館などに行く時間は取れないもので、知り合いがとても良かったと言っていたので、子供たちが学校に行っている午後に、思い切って行ってきました。

マラケシュのBen Salahという地区にある、Boucharouite Museumです。

ボシャラウィットラグを治める美術館はこのあたり…

ボシャラウィットラグを治める美術館はこのあたり…

Boucharouite (ボシャラウィットラグ)というのは、もともとベルベル人の村で、畑仕事の減る冬季に、自分たちで使うため、と現金収入の手段として、古布を利用して作られたリサイクルラグのことです。自分の娘や息子が小さいときに来ていた服などで作ったものは、記念に手元に置いておき、それ以外の大人の古着で作ったものなどは、女性が共同で、または個人で織ったものを、村の男たちが近隣のスークに売りに行き、売り上げは村の人たちで分けます。

こういう経緯から、モロッコではボシャラウィットは、村の貧しい人々がつくるラグという認識がなされ、ある意味、恥ずべきものという感じで日陰者のような扱われ方をしていたそうです。(私がボシャラウィットラグを知った時は、すでに日本でもモロッコの可愛いラグとして認識がされている時期でしたので、この話しに正直驚きました。)

ボシャラウィット美術館

ボシャラウィット美術館

1990年代にこのミュージムのオーナーであるパトリックさんが、知り合いのベルベル人を通じて、ボシャラウィットラグの中に、とても芸術性の高いまさにアート作品があることを発見。何百枚というボシャラウィットラグの中から、彼の心を打つ、アート作品級のものだけを集めてきて展示しているのがここです。

中に入ると、日本でよく見かけるリュウノヒゲという植物が中庭の花壇にたくさん植えられていて、その隣に、小さな池があり水の流れる音がするので、日本を思い出して懐かしくなってしまいます。リアドそのものは18世紀の建物を改築していて、シンプルながらとても素敵です。

ボシャラウィット美術館の中庭。

ボシャラウィット美術館の中庭。

オーナーのフランス人パトリックさんは小さい頃からアートが大好きで、美しいものに目がなかったそう。そんな彼は1990年代後半にBoucharouiteに出会い、パリや、ロンドンで展示会などを開催し、山での過酷な生活をおくるアートスクールなどで芸術を学んだことのない人(山に住むベルベル人の年配女性の文盲率は非常に高いです)が作り出すこのラグの価値を国際的に高めたい、と活動してきたそうで、その情熱は今も一切覚めることがないようでした…。

パトリックさんいわく、ベルベル絨毯の色には意味があります。

黄色⇒男性

赤色⇒女性

茶色⇒自然、大地

青色⇒幸せ、コーラン

黒色⇒悲しいこと、不幸、問題

白色⇒死、喪

緑⇒天国

かたちも定義されている場合があり、ひし形は肥沃、多産を(または邪視)四角は土地など。

これを頭に入れると、この絨毯のここの黄色が男性、きっと旦那さんを意味していて、赤色が女性である自分、ここで子供が生まれて、ここの黒色で悲しいことに何か不幸がおこっている、黒の次に白があるから(白は死を表す色)誰かが、もしかしたら子どもが亡くなったのかも…でもここの緑が天国を表しているから、彼女は今は幸せを感じているんだうとか…

最も強烈に印象に残っていてとても幸せを感じるラグがこちら。

ボシャラウィットラグ

写真が悪いですが、このボシャラウィットラグの下にはベッドがあります。

ディスプレイがまたステキでベッドサイドにかかっています。まさに、夜の交わりの様子を描いたラグ、これを織ったのがもう80才をすぎた女性で、彼女のご主人は彼女がこれを織った時「あちゃ~」と恥ずかしがったそうですが、ベルベル村でも80を過ぎた女性はもう何をしても”神”に近い存在なので、まったく周りのリアクションは気にしていないそう。彼女は旦那さんとの幸せな一瞬、それにより生まれた2つの命をいかに尊んでいるか、このラグをみて感じます。(赤が女性、赤に挟まれている黄色が男性、上の青が幸せ、という風にラグを読みます)

次の1枚は、ラグの下の3/1が解かれ、編みなおされていのが分かります。これは、デザイン性を重視して、ひし形模様のラグを編んでいた女性が、双子を苦労して産み落とした自分の人生を、ラグに編みたい、と思いなおし、一旦は完成させたラグを解いて、出産の苦労と産み落とした喜びを編みなおしたのだそう。ここでは双子を生むというのは奇跡だと喜ばれるので、苦労もあったが喜びもひとしおだったのでしょう。

出産の痛みを表したボシャラウィットラグ

左下の茶色が母体、足のようなものが出産の痛み、足の間のひし形が2つの命

この美術館、他にも若くして娘を亡くした母親の苦労が読み取れる黒一色のラグとか、下着で作ったお茶目なBoucharouite(ボシャラウィットラグ)があります。パトリックさんは毎日、母親の苦しさと若くして命を落とした無念の女の子を思い、黒いボシャラウィットに毎日触れるそうです。

ボシャラウィットラグの展示方法

ボシャラウィットラグの展示方法が斬新

一介の女性が編み込んだ自身の人生。学校に通う機会のなかった文盲の、山で生きる女性の一生は、過酷です。その中で感じる出産や家族の小さな喜びに思いを馳せ、胸が熱くなった午後でした。

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