ハマム巡りをして気になったのでハマムの歴史について調べてみた…。

モロッコの老舗ハマムにそっくりなBay Hammam(ギリシア)

モロッコの老舗ハマムにそっくりなBay Hammam(ギリシア)

モロッコに来ていただいた方にハマムを案内すると、たまに聞かれること。

ハマムって他の中東の国でもポピュラーなのでしょうか?ということ。
正直、そんなこと考えたこともなかったので、歴史とあわせて調べてみました。
(日本からいらして下さった人をご案内すると自分の勉強になるので、モロッコをよりよく知るいい機会になります、有難いことでございます)

歴史をさかのぼりましょう。

テルマエ・ロマエの映画効果もあり、公衆風呂といえば、ローマ人が発展させたものという認識はかなり広まっています。ローマ時代よりも前、インドのモヘンジョダロに公衆浴場の遺跡がありますが、ローマ人の風呂好きは抜きん出ており、老若男女、富める者も貧しき者も1日楽しむことができる場所だったようです。このローマ人が発展させたパブリック風呂、「テルマエ」は、ローマ帝国の属州であった地中海沿岸、中東などにも広がりました。
ここモロッコでもメクネス近郊のVolubilis(この地はかつて、ローマ帝国の属州として穀物倉庫的な役割を担っていたところ)には8世紀の公衆風呂ハマムの遺跡がのこっています。
モロッコの超おすすめローマ領時代遺跡Volubilisの公衆風呂跡

モロッコの超おすすめローマ領時代遺跡Volubilisの公衆風呂跡 photo taken from wiki

ロ―マのテルマエは3つの温度差のある部屋(高温浴室)(微温浴室)(冷浴室)のある部屋を行ったり来たりして血液の循環を促し、ローマ人は水を満たした風呂に身体全体を浸からせ(まさに今の日本の温泉のようなイメージ)そこで雑談や論議を戦わせたそうですが、イスラム教徒はこの、体全体を浸からせる、というのが衛生観念的に受け入れられず、初のイスラム王朝、ウマイヤ朝時代には、ローマ人の3つの温度差のある部屋をもちつつ、蛇口からのお湯と水で身体を清めるスタイルの風呂を作ったそうです(今のハマムの原型)。
8世紀、ヨルダンに作られた要塞Quseir amra (世界遺産)にはハマム跡がかなりしっかり残っており、モロッコの旧市街でお馴染みのドーム型の建物が砂漠の真ん中に建っています。そのハマム内部の壁画をみて、私はおもわず、目を疑いました。
これ、いつもハマムで見る光景とおんなじ!
(こういう体系の人とても多いです、モロッコ)
(ヨルダンのQuseir Amr)

小さい子供をひょいと抱えるおかあさん、モロッコハマムお馴染みの光景(ヨルダンのQuseir Amr)

日本人の私には、トルコのオスマンパワーのすごさがいまいちピンと来ないのですが、オスマン帝国時代に、トルコ人たちは代々伝わるHammam(ハマム)を統治していった土地で広げたため、トルコ人が来たところには”ハマム”が残っている、ということ(!)。

トルコ人は、16世紀にギリシャの教会をモスクに次々と改築していきますが、モスクの近くにはハマムを作ります。その中の一つ、Bay Hammamは1968年までハマムとして使われていました(今では臨時のギャラリーとして利用)。

モロッコの老舗ハマムにそっくりなBay Hammam(ギリシア)

モロッコの老舗ハマムにそっくりなBay Hammam(ギリシア)

ハンガリーのブタペストにも16世紀のオスマン統治時代のハマムが残っています。

ブタペストのハマムphoto by: Misibacsi

ひるがえって、中東のハマム事情はどうでしょうか?
どうやら各個人宅にシャワーやら浴室が完備されつつある昨今、中東ではハマムは廃れていく一方のようです。
エジプトのカイロでは以前は300ほどあったハマムが、現在では数か所にへりました。
シリアのダマスカスでは各家にシャワーや風呂設備ができてから、ハマムに通う人はかなり減っていたらしく、戦争で停電したり水不足に陥ってから、皮肉にもハマムに人が戻ってきたと書いてあります。。。
にしても、このハマム、まさに日本の銭湯、いやいかにも日本のユーバス的ですね。
お風呂上りに食事(レンズ豆料理!)やティーもだしています。
985年に建てられたハマムが現在も2ドルぐらいの入場料で楽しめるとは…

シリアのハマム2017年/ AFP PHOTO / LOUAI BESHARA

モロッコはそんな中で、ローマ時代からのテルマエの流れを汲んだハマムが今現在でも、生きています。必ず、近所に1つはハマムがあり、ほとんどの人が1週間に1回は通っています。人々は3つの温度差(高温、中温、低温の部屋)のある部屋を行ったり来たりもまるでローマ時代とおなじ。モロッコほどハマムが現代の生活に深く根付いているとことは、あとはトルコぐらいでしょうか(アルジェリアやチュニジアの事情はまだ調べていませんが)

このギリシアのハマムもマラケシュのBab Doukkalaハマムを彷彿させます(by Marsyas)

このギリシアのハマムもマラケシュのBab Doukkalaハマムを彷彿させます(by Marsyas)

モロッコと同じく、ハマムがまだまだ現役活用されている国トルコでは、モロッコと同じで3つの温度差の異なる部屋があり、スチームで満たされた部屋で温まるのですが、どうやらトルコの方がスチーム量が多く、部屋の温度が高い模様。
また、石鹸を泡立てたもので身体を洗ってくれるのがトルコ風で、モロッコのようにSavon beldiやGhassoulを使うことはないそうです。
これを書いているうちに俄然トルコ式ハマムに興味がわいてきました…
今度イスタンブールでトルコ風呂に入って違いを体験しないといけませんね。

ハマムって基本はローマ人が作ったシステムをほぼそのまま今にひきついでいるので、ハマムに入ると古にタイムスリップする感じがするのも納得です。それに、ハマムにいる女性たちが、何世紀も前に書かれた絵画の中の女性そのもので、わたしはハマムで絵画鑑賞しているような気分になるときがあります。。。

ドラクロア作アルジェの女

ドラクロア作アルジェの女

モロッコに来たら一度はハマムを体験ください、風呂好き日本人には、オススメする体験です。
 ちなみに、ネクタロム商品が採用されているマラケシュのハマム一覧です。(わたしの知る限りです)。https://www.secrets-maroc.com/nectarome-products-marrakech-hammam-hotel

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする